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 解説

「組曲 ゆびきり」 男・女 小説のような音楽    2006.5.12Release  TORA-00081 \3.000(tax in)
from  只野菜摘
組曲「ゆびきり」
恋のはじまりから終わりまでが
回想するような、巻きもどすような、曲と詞をはさみながら、描かれてゆきます。
このアルバムには、“時間”が閉じこめられているのです。
“ゆびきり”という言葉にも、“時間”が含まれているようにおもったので
メインのタイトルにしました。
ゆびきりをする時、ひとは未来をみていますけれど
ゆびきりが過去になる時・・約束は果たされたのでしょうか。
何回か、とおして聴いてくださったあとに。
ひとつひとつの曲を、
“ゆびきり”という言葉を思い浮かべながら、聴いていってみてください。
スパイスの香りが、ふっとたちのぼるように
少しだけ、せつなさを立体的に感じていただけたら嬉しいです。


「こっちをむいてよ」
“花”という詞を書いたことがありました。 男のひとが恋人に、愛の言葉と、贈りものをするのです。
あちらが“陽”の二人なら、 こちらは“陰”のなかの二人。
すべりはじめた彼らは、どのように始まり、どこへむかったのか。 アルバムの最後に、もう一度おなじメロディの曲が登場します。
そちらは曲のサイズがすこし小さいので、タイトルも短く “こっちをむいて”・・よ、をぬいておきました。

「空中庭園」
夢や妄想。 恋のはじまりに必要なものでつくられるビジョンが、空中庭園です。
とくに欲望。 恋のはじまりを、それぬきでは語れないでしょう。

「栞・・男」
昔の本をひらいて そのころ琴線にふれた場所に引いた線を、みつけたことはありませんか。
物語に、はさみこまれた栞(しおり)。
“栞”の“男”と“女”は、そういう瞬間が呼びさます記憶。

「そしてまた恋をする」
またね、のあと一人で帰る淋しさを埋めてくれるギター弾きの音が、卵いろだったので
電車の窓からみえる灯りの尾をひかせてみました。

「栞・・女」
一緒にいても、ふりかえり気がつくと 男と女のなんと違っていたことか。

「ゆびきり」instrumental
はじめに聴いた時の印象から、この題名をつけました。
ゆびきり。
かわいらしくて、しあわせな約束の瞬間。
アルバムのタイトルにもなりました。 いつかこの曲にも詞をつけてみたいとおもっています。

「ショート・カット(幸せな日々)」
短く髪を切ってきた女の子。 二人の想い出をつなぎあわせて映画のショート・フィルムみたいに、並んでみている時間。
いくつかの意味をかさねた“ショート・カット”ですが、
いちばん最初の理由は、メロディの構成にありました。
“空中庭園”と“h.”のメロディのショート・カットがこの曲のなかには挿入されています。 おもしろいので、詞もほぼそのまま流用しました。 曲順的にも、この曲は“空中庭園”と“h.”のあいだにあって、 バイアスというか、近道というのか、ショート・カット。
フランスの映画のイメージで詞を書いたら、 乾いたエア・コンディショナーみたいなスライド・ギターがついてきて 妙にすてきな、いい感じになりました。

「h.(・・her eyes closed.)」
作曲者からの、詞のイメージを書いたメモに 「H。キャー」って書いてあったので、そのままタイトルにしてみようとおもいましたが、
そのままじゃさすがにダメなので、小文字にしました。 サブ・タイトルの略でもありつつ、 詞のフレーズにもあるとおり、声にならない声の呼び名でもあります。 エルメスというように、フランス語でH(アッシュ)は発音されず、
恋人がかすれた声で言いかけたのは、どんな名前なのだろう・・ というような、愛と不安につつまれる一瞬を
この曲の、甘いひとときのなかに感じていただけたら。

「栞・・写真」
小説のあいだにはさんであった写真。 呼びおこされる記憶。
次にくる“道”という曲の、一部分です。

「道」
栞の“男”“女”を書いたとき、 あと2つくらい、栞をはさみたいとおもいました。
栞にできるものは何か考えたら、“写真”と“枯葉”が浮かびました。
そのあとにこの曲と、短いバージョンの2つが届いたので そのあたりを計算しながら、詞をつけていきました。
写真にまつわるところの表現は、 このアルバムに使われている写真を撮ったカメラマン
大沢つよし氏の作品の世界を、個人的にイメージしています。

「栞・・枯葉」
小説のあいだにはさんであった枯葉。 呼びおこされる記憶。
これも“道”の、一部分です。

「衝動」
すべての詞を、すべての曲の流れを考えたりしながら 7日間くらいのあいだに書いていたので、最後のこの曲の頃には、
かなり朦朧としていたようです。 そのおかげで、現実と非現実のあいだを突っ走るような、 とても好きな世界にいってしまいました。

「こっちをむいて」
哀しすぎます。


from 松下誠
去年の5月頃でしたか、A3のサウンドで組曲のアルバムを創ったらど うかとボンヤリ発想していたのが現実になりました。
当初「扉をあけて」というアルバム・タイトルを勝手につけてイメージ していました。
アコースティック・サウンドでのトオル君の声は、誠実で少し悲しい恋の歌が似合うので、恋の始まりから終わりまでを組曲にしたらどうかと思ったのです。「扉を開けて・・・最初に彼女を自分の部屋に招き入れる瞬間(愛し合う瞬間)」というストーリーの断片を思い浮かべていましたが、トオル君から「アコースティック・プログレを創ってみ たい」というリクエストもあり、その後イメージは変わってゆきまし た。(プログレというのは Progressive の略で70年代に前進的だったロック・サウンドの総称です)今年の1月後半にまとめて作曲したのですが、 結果的にプログレという趣旨が生かされたかどうか・・・
今年に入って早々殺人的なスケジュールになってしまったので、作詞家の只野菜摘さんとも十分な打ち合わせもできなかったのですが、どの曲 にも素晴らしい詩を書いていただき感謝しております。アルバム全体としても今の「鈴木トオル・A3」を反映した出来になっていると思います。
前回の「ありがとう」の時もそうだったのですが、トラック・ダウンの時間が足りなくなり、10年ぶりくらいに70時間以上も徹夜し、その反動で35時間も眠り続けました・・・ははは!

「こっちをむいて」
去年発表したミニ・アルバム「ありがとう」の一曲目「四季彩」は、実はこのアルバムの予告編だったのです。あの時点で4曲ほどの曲ができ
ていて、そのイントロや間奏などをつなげてインストにしたのですが、 ステージなどで何度も演奏しているうちに1曲としてのイメージが固
まってしまい、歌の部分を新たに創って一曲にまとめました。

「空中庭園」
作曲課程上、最初にできあがった曲です。フル編成のアレンジを想定して創ったので将来そのかたちで発表できればと思います。
「現実に足をつけて」という言葉がとても気に入っています。

「栞 ・・男、女」
昔、EL&P や KingCrimson の曲にこの様なアルペジオ・パターンがありました。トオル君がリクエストしていたプログレという部分は、結局この程度しか答えられなかった・・・ははは! 部屋の中で孤独な時間を過ごしているイメージです。

「そしてまた恋をする」
一番最後にできた曲です。それまで出来上がっていた曲を並べて聴いていて、トオル君が「3拍子のバラードがほしい」と言うので書いたのですが、僕は3拍子の曲は嫌いで今まで創ったことがありませんでした。でも、結果としては良くできたと自画自賛・・・どうでしょう?

「ゆびきり」
この曲はアルバム中唯一、江口正祥の作曲によるものです。普段の動向に似合わず(?)ラブリーでロマンティックな曲を書きますよねぇ!?

「ショート・カット」
個人的にはこの曲が一番気に入っています。A3のアコースティック・サウンドの新しい側面を引き出せたのではないでしょうか? 
トオル君の歌い出しのフレーズは今まで聞いたことがない感じだし、江口のスライド・ギターが素晴らしい!

「h. ( her eyes closed )」
恋人同士が初めて愛し合う場面をイメージしてして作った曲です。エロティックなことというと日本人はどうしてもネガティブなことと考えが
ちですが、ちゃんとした愛をともなう健全なセックスを表現したかったのです。イメージどおりの素晴らしい詩を書いていただきました。

「栞・・写真、枯葉」
「道」のメロディーをモチーフにして創ったバリエーションです。江口と僕とでシークエンス・パターンをつくり、そこに歌をのせたもので、
アンビエント風な創りです。これも以前からやってみたかった試みで、こんな感じって皆さんお聞きになったことないんじゃないかなぁ・・・
ねらい通りの出来でした。

「道」
Sting "Fields of gold" という曲が大好きで、そんなアイリッシュ・フォークのつもりで創りました・・・その部分を「枯葉」という言葉に
反映していただき、感謝。2コーラス目の「この写真の・・・」からの詩は美しいなぁ・・・夢に出てきそうです。

「衝動」
アップ・テンポの曲が必要だと思い、演奏もフィーチャーした曲にしたいと思って書いた曲です。本当はこの曲の後に「道」がくる方が、
ストーリーとしては繋がると思うんだけど、どうだろう? ・・・あっ、 もう遅いね!

・・・などという様に、創った側としてはいつまでたっても多くの悔い が残るもので、僕は長年の経験上、出来上がった作品は客観的になれる
まで1年以上聞かないことにしているんですが(でき上がる課程で飽きるほど聞いているしね)、
皆さんはイッパイ聞いていろんな感想を聞かせて下さいね!!!


 

追記 只野菜摘より
・・ものがたりのはじまり。
「空中庭園」
松下誠氏から、“扉をあけて”がアルバム・イメージだとうかがっておりました。ほんとうなら、物語の始まりであるこの曲のタイトルに
するべきだったかもしれないのですが、“空中庭園”という言葉があっという間に浮かんできてしまったので、お詫びに
“ドアをあけ”というフレーズを詞のなかに入れておきました

・・ものがたりのおわり。
「衝動」
じつはわたしも最初、“道”で終わるほうが話は繋がるかなと思いました。でも今は、この順番が気にいっています。愛した人との別れは、
けしてスッパリといくものではなく、いつまでも想いや思い出を残したり、もう一度会ってみたり・・
そういうほうが、リアルなのじゃないかと。“衝動”から“こっちをむいて”の流れを、回想、再会・・
どう聴くかによって、物語の終わりの受けとめかたがかわってくる・・終わったのか終わっていないのかさえも。


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