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 鈴木三吉商店


2005.10.12


『清課堂/山中源兵衛』
京都は寺町二条に余りにも美しい工芸品を作る工房がある。
錫の器・金属工芸の工房だ。天保9年(1837年)、初代山中源兵衛は「錫源」を名乗り現在と同じ場所で開業した。時は流れて6代目となった今現在も錫をはじめ各種金属素材を使った工芸品は、宮中の御用品、神社仏閣の荘厳品、茶道各御家元好の道具など様々まで製作をしている。京都は寺町での商いは当然の成りゆきだったとも言えるだろう。
さて紹介のぐい呑み器は、襲名前の7代目にあたる「純平君」の作品。
伝統は引き継ぎつつ“カッコイイものを素直に追求したい”と言う。そんな彼の言葉どおりに洗練とモダニズムに溢れた錫のぐい呑みだ。
しかし、伝統の風格も失ってない。錫の器・・、伝統工芸・・。
本物は、やはり人を威圧しないが、純平君のそれはには攻めの姿勢がある。その感覚が清清しくて僕には何とも嬉しかった・・。

 

 


伝統と攻めの姿勢のコラボレーション。


2005.09.14


『ただ一つの味を守る・・』
丁寧に丁寧に、何度もさらされた十勝産の小豆100%の餡、それを包むのは薄さ1ミリあるかないかの薄皮。四国は愛媛の山里で生まれた
饅頭である。
その昔、一人の巡礼者にひと夜の宿を提供した商家の主。その巡礼者か
らお礼にと饅頭の製法を教えられたと云う。その美味しさは、たちまちのうちに評判になり、宇和町にある山田薬師寺の薬師如来の伝説に因み屋号を山田屋として店を開くことになる。創業、慶応3年、ただ一つの美味を受け継いで代々5代にもなる。
『山田屋まんじゅう』、その小さな饅頭の中に代々受け継がれた技術があり、積み重ねられてきた時間、そしてこだわりも詰め込まれている。うやうやしい気持ちで包みを開けて、口にひとつ放り込む・・。つちかわれた時間ってヤツを味わう瞬間だ。
しかし、そんなこだわりを全く感じさせない程の優しい味である。やはり、本物は人を威圧しない。
思わず、もうひとつ・・・、小さな贈り物に手がのびる。

 

 


積み重ねられた時間は買えないが、 この小さな饅頭から歴史の一端を味わう事が出来る。


2005.08.
17

『京都生まれ・京都育ち』
子供の頃、野菜という野菜は好きではなかった。どれが、どのように嫌いと問われても・・、答えようの無い程に、野菜という野菜が統べてに 渡って大キライ!!だった。したがって、吾が母親は毎日の献立に何と困り果てただろうか・・・??などと、今になって反省しきりである。だが、そんな事情には裏があって、と言うより訳がちゃんとある。
当時僕等が少年期を過ごした時代には、農業も大きく変化を余儀無くされた時だった。質より量の時代・・・、野菜は品種改良を繰り返えされ大量生産が可能になり、本来の味とは程遠い野菜(野菜の大型化もその一例、昔のニンジンや大根などは小さくて短い物であったが逆に味は凝縮され野菜本来の味がした)が市場に出回った。
さて、最近になって食の見直しって事が取り沙汰され生産者がこだわった野菜を目にする事も増えてきた。京野菜のひとつ、満願寺唐辛子。 と云っても辛いわけじゃない。野菜の甘味と苦味のバランスが素晴らしい “満願寺”のおひたしに、原了郭製の黒七味と粉山椒(世界に誇れる香辛料)。最高の夏のおかずだ。今では、野菜も大好物だ。

 

 


一回りするには、どんな事も時間がかかる


2005.08.05


『センスが重要!』
暑い日がつづいてますが、と言うより「熱い日がつづいておりますが・・・」って感じです。特に8月に入ってからの猛烈な暑さには身体がついて行けないってところだろうか。夏が来る度に言われる、水不足や電力不足。冷房は、28℃設定で・・。
もともとが、エアコンディショニングされ過ぎの部屋が得意じゃないので、自宅のエアコンも28℃、しかも省エネ運転にセットしている。それでも、こんな猛暑の続く日中に炎天下を汗ダクになりながら歩き、コーヒー・ショップにやっとの思いで避難した時に省エネ運転28℃設定・・・??。そんなんじゃ汗は引かない。それどころか、急に足を止めて休んだものだからと、一気に汗が毛穴から吹き出る。たまったもんじゃない。
さて、そんな時に『扇子』である。団扇のように邪魔にならず、何ともコンパクトで良い。それに見た目だけでも既に涼しげだ。ここ2・3日の間、何度もこの扇子に助けられた。と、思い・・、先日電車の中でフッと見渡してみたら、何人もの方が扇子をパタパタと御愛用。
ふぅぅむ、まだまだ捨てたもんじゃない、夏の風情だ。

 

 


省エネ時代には『センス』で勝負!
扇子は、夏の風情だねぇ。


2005.07.21


『涼を求めて・・・』
夏が本番を迎えた・・。一ヶ月にわたっての祇園祭りも今月いっぱいで終わる。そんな京都でも先日の山鉾の巡行を境に梅雨が明け、いよいよ夏の到来である。京都の夏・・、勿論日本どこへ逃れて行っても夏だ。しいて言えば、北海道は釧路あたりまで逃げて行けば涼しい顔をしてこのシーズンをやり過ごす事が出来るだろうが、普通は逃げ場が無い。
そんな中で、京都の夏は猛烈に暑い。暑いばかりでなく、まとわり付くようにジットリと根深い暑さだ。そうした背景か??
京都人の涼の取り方には色々な工夫がある。鴨川に出された川床、町家には水を打った 箱庭、扇子にはほのかな香の匂いを含ませたりと、暑さを涼に変える為の工夫に「なるほどねぇ・・」と思う。
さて、暑さ凌ぎのお菓子。京都は高台寺、全国にも名前が届く料理屋さんの作る水菓子。蓮根のデンプンと和三盆で出来た“プルプル”の水菓 子。口に含むと僅かな甘味とスルリと咽を通ってく時に残る笹の葉の匂い・・。
嗚呼、京都はホントに夏の暑さを楽しむ方法を知っている・・。

 

 


何とも涼しげな京都の水菓子。
ホンマ、ええわぁ(^.^)。


2005.07.06


『空の玄関口、幻の町・・』
東京は常に移りゆく宿命を背負わされた都市だ。世界各国を廻り、実際に幾つもの街を見て来た。そんな中でも、我々の住む東京という街ほど変化をしつづける事を義務づけられてるかのような街は他に知らない。「羽田」もそんな呪われた宿命を負わされた町である。空の玄関口の町として栄えた町も今は幻・・。羽田の町の向こうには、新たに創られた巨大なエア・ターミナルの建造物。ショッピングから食事、勿論ここを拠点に全国何処へでも飛んで行ける。羽田の町と羽田エア・ターミナル・・、まさにネガとポジである。
さて、そんな幻の町に「幻の煎餅」横山煎餅本舗。この煎餅、紹介しようか??どうしよう・・。そんな具合に迷いに迷ってずっと紹介出来ずにいた。何故ならば、予約だけの販売。そして、予約はいつもいっぱいで、何ヶ月か先まで買えないと云う幻の煎餅だから。パリッと焼かれ
た薄焼き煎餅をひとかけら・・、口の中で香ばしい醤油の香りとうるち米のしっかりとした味が広がる。幻の町の幻の煎餅・・、今度何時出会う事が出来るんだろうか・・??

 

 


『横山煎餅本舗』要予約の本格薄焼煎餅


2005.06.22


『バスルームから愛を込めて・・・』が微かに聞こえる。
西荻窪の一軒のラーメン店、 「はつね」。タイム・スリップと云う言葉だけで片付けていいのだろうか・・?。そんな愛おしい感覚。山下久美子というシンガーのバックキング・ギタリストのオーディションに行ったのは何年前?、いや何十年前になるんだろうか・・?。
シンプルなラーメンに竹輪と絹さや。それ以外に何も起こらない程に平凡な中華そば。
昭和の時代なんてつい先日と思っていたのに、既に17年前になってしまっている。昭和を懐かしむなんて・・、そんなに昔じゃない事。
なのに、懐かしさに心が静かになる。誰にだって良き時代と愛おしい時間と云うものがある。普段忘れていたものが優しい足音を響かせながらやって来る。
「はつね」の中華そばの味と微かにラジオから流れてた「バスルームから・・」の山下久美子ちゃんの歌声。僕は、両眼の端っこに涙を滲ませながら麺をすすった・・・。

 

 


昭和が溢れ出す


2005.05.12


『ビックリ・コッペ』
子供時代、学校給食が大の苦手だった・・。小学校に入学したばかりの頃なんてのは、牛乳だって脱脂粉乳の時代だ。勿論、器に至ってはアルマイト(安いブリキみたいな・・)製だった。その給食の時間は正に地獄(かなり個人的に)の時間だったし、昼休みに友達が元気に遊んでいる時間まで地獄の時間が食い込んだ(時間内に食べられずに・・)、なんて事は日常茶飯事。当然、昼休み中にも食べられない物は食べられず、そのままひ机の引き出しの奥に放り込んだ物も数知れず。学期末に机の中身を整理すると「出てくる、出てくる、色んな物が」って状態。
そんな中にいくつもの固く変型したコッペ・パンも・・。
さて、亀戸〜曳船駅までと云うホントに短い距離を行き来する亀戸線の小村井駅から10分程の所。古〜いガスのオーブンを使い丁寧に焼き上げる、コッペ・パン専門店『ハト屋』。 店も、今にも倒れそう・・な程、古い。しかし、今までに食べた事の無い「コッペ・パン」にビックリ!!
上等な粉の香りが甘く鼻をくすぐる。次の日の朝になっても依然としてフワフワのコッペ・・。こんなパンが出てきたら給食の時間も天国だったのになぁぁ・・。わざわざ、こっぺの為に出掛けて行く価値大ありのビックリ仰天コッペ・パンだ!!

 

 


コッペだけの店なんて、他にありますか?


2005.05.06


『ポルトガル生まれ』
今より約460年も昔の事、異国からもたらされた品々の数々の中、一際人々からの目を引く美しい菓子があった。
グラニュー糖を溶かした蜜を少しづつ振り掛けては乾燥をくり返し結晶させていく・・・、世にもカワイラシイお菓子「金平糖」。

これを頂いた時、正直にとても嬉しく心が踊った。何せ、日本でたったの一軒だけである金平糖専門店の品である。何かのテレビだったと思う・・、以前に京都の金平糖職人が紹介されたのを見た。その時から「いつかその金平糖を・・」とずっと心に留めていた。
金平糖が出来るまでには、17〜20日もかかると云う。日本でたった一軒と言う以前に貴重な物だ。皇室の引出物は、金平糖だとも言う。
そんな手間ひま掛けた金平糖は実に「御目出度き品」ってところだろうか。緑寿庵清水の手作り金平糖。究極の伝統の金平糖・・、ずっと無くならないでいて欲しい。口の中で優しく解けてく甘味を愛おしく思う・・。

 

 


伝統の金平糖


2005.04.20


『下北沢・アンゼリカ』
手作りパンと洋菓子の名店として永く下北沢で親しまれているアンゼリカ。アンゼリカ=エンジェル=『天使』という名を持つ町のパン屋であ
る。最近巷では、カレーパンで有名なパン屋として有名らしいが、亡き池波正太郎さんもわざわざここのドイツ・パンを取り寄せては楽しんでいたようだ 。
一杯のコーヒーと食パンが毎朝の日課であり、小さな楽しみ。近所のパン屋から有名なパン屋の食パンまで、これと言って凄くこだわって食べているわけではないけれど・・アンゼリカのドイツ・パンだけは特別。 トースターに放り込んで火を入れた途端から全くの別物だ。焼き上がるまでの匂いが昔を思い出させる・・。コーヒー豆に湯を注ぎながら心の中が懐かしさでいっぱいになる。たまらない一時。バターをひとかけら乗せて、ハチミツをスプーンからひと垂らし・・。一口噛み締める度に小麦の香りとほのかな甘味が口に広がる。まるで、幸せな朝を天使が運んで来るみたいに軽やかである。

 

 


何故かここではドイツ・パンと呼ばれる。
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